「第13回明野薪能」曲目解説

狂言『附子(ぶす)』

 主人が外出するにあたって、太郎冠者(シテ)と次郎冠者に附子をあずけ、これは猛毒だから気をつけるようにといいおいていく。
初めはおびえながら附子の番をしていた二人だが、附子をみたい、ついには食べてみたいと、扇であおぎながら附子に近づく。
味見をすれば砂糖だとわかり、結局、みんな食べてしまう。その上主人秘蔵の掛軸を破り、天目茶碗をこなごなにする。
 やがて主人が戻ってきたので、二人は泣く。
主人がわけを尋ねると、二人で相撲をとっているうちにあやまって掛軸と天目茶碗を壊してしまった。
そこで附子を食べて死のうと思ったがまだ死ねないと言い訳し、逃げだす。

狂言『苞山伏(つとやまぶし)』

 薪をとって暮らす山人が、今日も山に入る。未明に家を出たので眠たくなり、休息をとることにした。
 また、旅の山伏が通りかかり、やはり眠ってしまう。
 そこに用があって道を急ぐ男
(シテ)が、眠った山人のそばに藁苞を見つける。どうも昼食の用意らしい。盗み食いして、そのまま眠りこむ。
 目覚めた山人は昼食がなくなったことに気づき、男を起こして質問する。
男は知らぬ顔で山伏があやしい、と山伏に罪をなすりつける。
疑われた山伏が、犯人を明らかにしようと祈れば、はたして男の身体がしびれて動かなくなった。
男が白状し助けを求めるので、再び山伏は祈り治そうとする。しかし、山人は怒りが収まらず、棒で男を追いかける。

能 『天鼓(てんこ)』

後漢の時代のことである。天鼓という少年がいて、天から降ってきた鼓を持っていた。天鼓がその鼓を打つと、すばらしい音がするのであった。
 この話を伝え聞いた皇帝は、鼓を献上するようにと命ずる。天鼓は鼓を持って山へ隠れてしまうが、さがし出されて、彼は呂水に沈められてしまう。その後、鼓は、誰が打っても鳴ることがなかった。
そこで、勅使
(ワキ)が天鼓の父王伯(前シテ)のもとへつかわされる。そして、参内して鼓を打つようにと命じるのである。
愛児を失って悲しみにくれる王伯は死を覚悟して参内し、悲しみのうちに鼓を打つ。すると、鼓は、心までも澄みわたるような美しい音を出して鳴ったのである。
皇帝は、王伯に宝を与え、天鼓のために管絃講を行うことにする。王伯は帰宅する。〈中入〉。

 管絃講の法事を行っていると、天鼓の霊(後シテ)が回向を感謝して現われ、喜んで鼓を打ち、舞〈楽〉を舞う。そして、夜も明けてくると、消えていった。