第8回明野薪能曲目解説

能「葵 上」

  後見方が左大臣邸内に病臥する葵の上の象徴として、二つ折りにした小袖を正先に置 く。神子(ツレ)がワキ座に着くと、朱雀院の臣下(ワキツレ)が登場して、葵の上に 物怪が憑き、祈祷施薬も効なく、照日の神子にその憑き物の正体を占わせようとするところだとのべる。神子が梓の弓を鳴らして呼ぶと、上臈姿の女性(前シテ)が破れ車に 乗って現われ、源氏の心移りや失意の日常をさまざまにかこち、六条の御息所だと明かして葵の上への嫉妬と屈辱の怨みを晴らそうと、枕許に寄って激しく後妻打ちをし、瞋 恚(しんに)の炎に身を焦がす我が姿を恥じつつも、葵の上を破れ車に乗せて連れ去ろう とする〈枕ノ段〉。〈物着〉で、臣下は急遽従者(アイ)を使いに立てて横川の小聖(ワキ)を呼ぶ。別行を中断して左大臣邸に参上した小聖が刺高の数珠を押し揉んで加持祈 祷を始めると、般若の面をつけ打杖を持った執拗な御息所の生霊(後シテ)が、怒りを なして早く帰れと小聖に迫る。双方たがいに譲らぬ応酬となるが、ついに生霊は五大尊 明王の威徳によって祈り伏せられ、「あらあら恐ろしの般若声や」と、読経に両耳を覆い、二度と参らぬことを誓い、やがて経文読誦の声に心を和らげ、成仏得脱して去って行く。

 

狂言「仏 師」

  自宅に持仏堂を建立した田舎者が、そこに納める仏像を買い求めに都へいく。都は大きく、なかなか仏師を探しあてられない。そこにあらわれた都のすっぱ(騙り者/シテ)は、親切めかして田舎者の求めをききだすと、自分がその仏師だと嘘をつき、仏像は翌 日できあがるから取りにくるようにいう。翌日、田舎者が受け取りにいくと、たしかに仏像がある。しかし、印相がおかしい。実はすっぱが仏像になりすましているのである。手直ししてもらおうと仏師をよぶと、すっぱがあわててあらわれる。印相を手直しするたびごとに、すっぱは仏師と仏像とに早替わりし、めまぐるしく交替しているうちに、最後は見破られてしまう。

 

半能「龍 虎」

  中国へ渡った日本の僧が、山の崖にやってくる。そのうち山の嶺より雲起こり、龍(ツレ)が現われ、ついで虎(シテ)が作り物の竹山が現われ、龍虎あいうつ激しい情景を展開[舞働(まいばたらき)]‥龍は雲居(くもい)に、虎は巖(いわお)にのぼって行く。