第9回明野薪能曲目解説

狂言「盆 山」

   シテ  所の者
   アド  有徳人

 「盆山」とは、お盆の上に風景をかたどった箱庭のようなものです。
 まず、男が舞台に出てきて名乗ります。世間には盆山がはやっていて、近所には盆山をたくさん持っている人がいるが、けちでひとつもくれない。頼んでもくれないなら、忍び込んでこっそり盗んでこようと思い立ちました。早速出かけていきます。 
 家の前からでは到底入れそうにないので、裏から侵入しようと試みます。まずは垣根を破ります。垣根を破る音の大きさに自分でも驚いてしまいますが、誰も気がつかなかったようだと知って一安心。思わず大声で笑ってしまい、慌てて口をふさぎます。どうやら誰も気がつかなかったようです。というわけで、ようやく垣根を越えると、盆山を物色し始めます。
 あれもいい、これもいいと物色に熱中しているうちに、家の者に気づかれてしまいました。男は慌てて盆山の陰に身を隠します。が、もちろん体全体が隠れるはずもありません。主人はすぐに誰が忍び込んできたか気がつきますが、そしらぬ顔で男をからかいはじめます。
 犬だ、サルだといわれるたびに鳴きまねをして、どうにか切り抜けようと必死です。が、有徳人が次に出したのは難題です。「あれは鯛じゃ」鯛はひれを立てるものだ、と言われ、ひれを立てます。
 最後に、ひれを立てた後では必ず鳴く、と言われます。さあ、これには困りました。何しろ、いままで鯛の鳴き声なんて聞いたことがないんですから。鳴かなければ鉄砲で撃ち殺す、なんておどされて、あわてて鳴きます。「タイタイ」「なんのタイタイ」「タイタイ」シテはぴょんぴょんはねながら幕へ入り、アドが後を追います。

 

狂言「梟山伏」

   山伏 野村与十郎
     兄 野村 佑丞
     弟 山下浩一郎

 ある男が、山から帰ってきて以来具合の悪い弟の太郎を治してくれるよう、山伏に頼む。山伏が一心に祈ると、太郎は急に「ホホーン」と奇声を発する。兄の話によると、太郎は山に入ったときに梟の巣を下ろしたということなので、山伏は、梟がとり憑いたのだと察し、梟の嫌う烏の印を結ぶ。しかし、一心不乱の祈りもむなしく太郎は鳴きつづけ、そればかりか今度は兄にも梟がとり憑いて鳴きだす。最後には山伏にも梟が憑いてしまう。

 

能 「船弁慶」

  前シテ…(静御前)  清水寛二
  後シテ…(平知盛の亡霊)  清水寛二
  子方…(源義経)  小野里泰輝
  ワキ…(武蔵坊弁慶)  森 常好
  ワキツレ…(立衆)  舘田善博・御厨誠吾
  間狂言…(船頭)  野村与十郎

 文治元年11月、兄頼朝の嫌疑を解くべく西国落ちを決意した義経は、摂津国大物の浦に到着する。静御前もここまで従って来たのであるが、弁慶の諌めで都に帰すことになり、名残の酒宴が開かれる。義経の不運を嘆く静は、清水観音の加護を祈りながら、別れの舞〈序舞〉を舞う。(中入り)
 義経の一行が船出すると、海上にわかに荒れ始め、平知盛をはじめ、壇ノ浦に滅んだ平家一門の怨霊が波間に立ち現われ、義経主従を海に沈めようとするが、弁慶が祈り伏せ怨霊は波間に遠ざかってゆく(1時間25分)。